加齢によるお口の変化1
いけだ歯科矯正歯科医院の院長 池田一彦です。
加齢が原因で起きるお口の中の変化を知っていますか?
・歯肉が下がる
・唾液が減少する
・味覚が鈍感になる
・前歯が出っ歯になる
などがあげられます。
今回は、このような加齢とともに起こりうる変化について解説し、その対策をご紹介します。
1 歯肉が下がる
加齢とともに、歯を支えている歯槽骨という骨が痩せていきます。そうすると歯肉の退縮が起こってきます。歯肉が下がると、歯の根の部分が表面に露出してきます。露出した歯根は、歯の一番外側を覆っているエナメル質に比べるとやわらかいため、とてもむし歯になりやすく、進行も早くなります。このように歯の根の部分がむし歯になることを、根面う蝕といいます。
症状としては、歯が長くなった、歯がぐらぐらする、冷たいものがしみるなどといったことが起こってきます。
歯茎が健康な状態の方であっても、1年間に0.1~0.2mm程度の速さで歯茎は痩せていきます。
歯肉の退縮は仕方のないことですが、間違った方法で歯みがきを続けていたり、不十分なお口のケアなどが、さらに歯茎を痩せさせる原因となりますので、対策としては、正しい方法で歯みがきを行う、歯科医院で定期的にクリーニングを行うことです。年に2回は歯科医院でみてもらいましょう。あとは、歯肉退縮に効果のある洗口液や歯みがき剤を使用したり、歯肉のマッサージなども効果的です。
2 唾液が減少する
歯肉退縮が起こっていても、唾液が十分に分泌されていれば、緩衝作用で菌の繁殖を抑制するので、根面う蝕にはなかなかなりにくいものです。しかしながら、加齢によって唾液分泌量が減少すると、口腔内の緩衝作用は低下し、細菌による感染リスクが高まります。
それ以外にも唾液には、粘膜保護作用、粘膜修復作用、消化作用、食塊形成作用など、たくさんの働きがあり、多方面から私たちの健康を守ってくれています。この唾液分泌量が減少すると、むし歯、歯周病にとどまらず、たくさんの疾患リスクが高まります。上のグラフのように、30歳から徐々に減り始め80歳には1/3にまで減少します。
症状としては、滑舌が悪くなる、口の渇きが気になる、固い食べ物が食べにくくなってくる、舌がヒリヒリする、入れ歯が擦れて痛い、などです。
唾液のケアには、食事指導のほかに、唾液腺マッサージで唾液分泌を促進するなどといった方法があります。保湿効果を高めるマウスリンスやマウスジェルなどの口腔保湿剤なども効果的です。薬局・歯科医師に相談しましょう。
3 舌苔
唾液分泌量の減少で、お口の自浄作用が低下し、舌の表面に汚れがつきやすくなります。この汚れを舌苔といいます。舌苔を放置しておくと、味が感じにくくなったり、味覚が変化したり、口臭がひどくなったりすることがあります。舌の組織には味蕾細胞という味の刺激を感じ取る細胞があり、加齢により50歳を過ぎた頃からこの味蕾細胞が減少すると言われています。食事の楽しみを守るためにも、舌苔のケアは重要です。
舌苔のケアには主に舌ブラシを使うといいです。舌の組織は非常に繊細なので、舌磨き用のジェルも一緒に使ってやさしく磨いてください。
4 前歯が出っ歯になる
これについては、長くなるので次回に回します。