タバコとインプラントの関係
タバコを吸うと歯周病がひどくなると言う事、前回お話しました。
タバコは歯肉にとってはとてもダメージが大きく、歯を失う大きな原因のひとつです。
そして歯を失ってからインプラントをしたいと思われても、タバコを吸っていれば歯と同じくインプラントも抜けるのです。
時々、ヘビースモーカーの方がインプラントを希望されて来院されますが、できない事もしばしばあります。
タバコの量に応じて、影響も大きくなりますから、どのくらい吸うかが問題です。
1日に2~3本程度ならほぼ影響はありません。少しの期間だけ禁煙に協力して頂ければインプラントは可能です。
5本を過ぎるくらいからは、歯肉も弱々しくて元気が無くなってきますから、禁煙か減煙をお勧めします。絶対にインプラントできないというレベルではありませんが、抜ける可能性がある事を理解して頂いて保証期間も短縮させていただいたうえで、インプラントはしています。
10本を超えると明らかに、口の中は煙に侵されていて、黒っぽい歯肉になります。このレベルでは、インプラントは、基本的にお断りしています。
20本を超えると、歯茎は硬くて多小さわっても出血もしません。歯肉の半分は死にかかかっています。インプラントのできるレベルではありません。
実は、以前に、一日に一箱(20本)ぐらい吸われている方にインプラントの手術をした事が有ります。本人がどうしてもインプラントをしたいと言われて、リスクを説明したうえでしたのですが、やはり無理でした。
まず、傷が閉じません。骨は十分にあって基本的な技術が有れば、インプラント初心者でも可能な簡単なケースでした。タバコを吸ってなければ、一般的には手術後の傷は一週間で閉じて、10日目くらいに糸を外せば一次手術は終了となります。
しかし、ヘビースモーカーの方は、傷が閉じません。血流の少ない死にかかった歯肉は、手術のダメージに耐え切れませんでした。インプラントを入れる部分の剥離した歯肉は、さらに血流の不足を起こして本当に死んでしまいました。専門的には、壊死と言いますが、日を追うごとに歯茎は軟らかくなり、歯茎が溶けて自然に糸が外れてインプラントの頭がでてきました。毎日消毒を続けて、周りから歯肉が再生してくるのを待つしかありませんでした。ご本人は、痛みが無かったので事態の重要性についてはあまり認識がなかったようです。
最終的には、重大な感染には至らず傷は閉じましたが、一ヶ月間は毎日消毒しないといけないという状況でした。
その後は、患者様と相談して、二次手術をして被せ物をする時期を、禁煙ができてからという事にしました。
このまま被せ物を作っても、インプラントと歯肉の間から感染して、インプラントが外れるのは明らかです。その後、この患者様は来られていないので、まだ禁煙ができていないのでしょうね。
前回も書きましたが、タバコを吸われている方は、胃がん・肺がんのリスクと共に、歯周病で歯が無くなって、かつインプラントもできない、という何重ものリスクも負っている事を知ってほしいと思います。