歯科矯正治療(歯並び治療)の開始時期 パート2 (床矯正)
歯科の矯正治療は一体いつから開始したらよいのでしょう?
意見の分かれるところですが、『もう少し、このまま様子を見ましょう』は要注意です。
前回から、このテーマで話していますが、前回の話は矯正治療の経験の少ない歯科医師が矯正歯科を標榜する話でした。その続きです。
5~10年前に、矯正方法の一つとして、床矯正(しょうきょうせい)という方法が流行しました。これも比較的簡単に矯正治療を始められるという理由で、一時的にはやりました。歯科医院の競争が激化したことにより、小児の患者を増やす事ができるという理由からです。やり方は、入れ歯のような装置を夜だけ入れておきます。簡単では有るのですが、この方法は、他人任せではなく、ある程度の矯正の知識が必要です。自分で診断して「床矯正だけで大丈夫そう」と判断して治療を開始する事になります。しかし、予期せぬ事態が起きたり、守備範囲を超えていたりという場合に自分だけで処置ができず、お手上げになる事があります。手に負えなくなった症例は専門医に回さざるをえませんし、そうすると信用を失うことになります。最初は簡単と思って始めた矯正が、歯科医師側にはストレスになるため次第に床矯正は流行らなくなりました。そのかわりに歯科医師にとってストレスの少ないマウスピース矯正(前回の記事を参照)が増えてきたのです。
床矯正は決して悪い方法ではなく、一般開業医にとっては、とても有効です。
本題の『歯科の矯正治療は一体いつから開始したらよいのでしょう?』の話に戻ります。
歯並びが悪いといっても実は、様々な形態があります。よくあるのは叢生(そうせい)という不正咬合の様式で、矯正の本場のアメリカやヨーロッパと同じく、日本人にも最も多い症例です。叢生は小学校低学年で、上下の前歯が出始める頃からはじまります。状態としては、歯が重なるとかスペースが不足して回転した状態になる感じで、八重歯の一種で、乱ぐい歯とか言う事もあります。この場合の治療法の第一選択肢が、実はこの床矯正です。この時に、一般の開業医で、矯正についてあまり知らない先生方にとっては、矯正=ワイヤーのイメージが強くあって、ワイヤー矯正なら小学校5~6年生から開始するのでまだ大丈夫と思い、『もう少し、このまま様子を見ましょう』と言ってしまいます。
しかし、軽い叢生なら、ワイヤーをする必要はなく、小学校低学年の1年生か2年生から床矯正をしておけば、永久歯が生えそろう頃には、終了し費用も4分の1から半分の予算で済みます。正確な時期は、個人差・程度の差があるのでいえませんが、小学校の3年生では、もう手遅れになる確率が60%となります。
小学校の2年生では、手遅れになる確率は20%ぐらいでしょうか。
小学校の1年生であれば、手遅れになる確率0%です。
小学校の4年生では、もう手遅れになる確率が90%となります。
という訳で、まとめると、日本人に最も多い叢生に関しての治療の開始時期は、
小学校の1~2年生ということになります。
他の種類の不正咬合につきましては、詳しくはまた次回に回します。