歯磨き剤の効果実験
副院長の甲斐です。
今回お盆休みの空いた時間を利用して、歯磨き剤の効果の実験をしてみました。
どんなものにも流行り廃りというものがありますが、歯科の世界であってもtrendの治療法、材料というものが存在します。治療の根幹となる部分から抜本的に変わるということは滅多にありませんが、よりすぐれた手法や材料へのマイナーチェンジというものは短いスパンで行われているものです。そうやって新しいものが生まれていった結果、治療の選択肢は広がっていくのですが、患者様の側からすると、治療法や使用材料というものを自由に選ぶというのは中々難しい事ではないでしょうか。その点、薬局で購入できる「歯磨き粉」は品揃えという制約を除けばほぼ自由に選ぶことができます。歯磨き粉(歯磨剤)は、歯磨きの清掃補助剤として、汚れを落としやすくする、殺菌作用をもたせる、口臭を防ぐ、爽快感を与える、など様々な効能がありますが、やはりその時々で流行というものがあります。少し前には、歯磨き粉の中に含まれている清掃剤(研磨剤)が、歯牙を磨耗させることで表面に傷をつけたり、知覚過敏を引き起こすとして、「研磨剤無配合」のものが人気を博していました。確かに、研磨剤を含む歯磨き粉を用いて間違ったブラッシングを続ければ、無配合のものと比べて知覚過敏等の不快症状を惹起する可能性が高くなることは否めません。しかし、研磨剤はもちろん何の意味も無く配合されているわけではありません。研磨剤無配合の次に流行したものが、「美白、ステインクリーニング作用」を持つものでした。これは、研磨剤を含まない歯磨き粉を使用したことで、着色等が取れないことが気にかかった方が一定数いらっしゃったことを示しているのではないでしょうか?着色がどの程度起こるのかということは、コーヒー、ワイン等沈着しやすい色素を含む食物をとる機会が多いか、などの食事の嗜好の問題や、歯牙の表面性状、歯並びなど多因子に影響を受けるので個人差が大きいものですが、実際のところどの程度歯磨き粉で落とすことができるのでしょうか?
研磨剤の有無でどの程度清掃能力に差がでるのか実験してみました。
(1) まずCD-Rの記録面に油性マジックで汚れのモデルを作っていきます。
今回使用する歯ブラシは一般的なフラットタイプです。
まず流水下で歯磨き粉を使用せず擦掃してみます。
やはり、というか全く落ちる気配がありません。
(2) 次に、研磨剤無配合タイプの歯磨き粉を使用してみます。
今回使用するのはバトラーの液体歯磨き粉です。
これを使って磨いてみると・・・
流水下で磨いたときと何も変わっていないように見えますね。
(3) 次に研磨剤入りの歯磨き粉で試してみましょう。今回使用するのは、ホテルなどでアメニティとしておいてある使いきりタイプの歯磨き粉です。
名前からして効果が期待できそうですね。実際に使用してみると・・・
10往復程度でマジックで作った汚れのモデルが落ちていきました。しかしCD-Rの記録面には細かい傷が入っている様子が見受けられます。
(1)~(3)の結果を見てみると、着色を取るということに関しては、研磨剤無配合のものはブラシのみの擦掃と同程度の効果しかありませんでした。研磨剤入りのものでは、確かに着色を取る効果を確認できましたが、ディスクの状態を見るに使用方法を誤ると歯牙表面の荒れを引き起こす可能性があります。洗車を例にとると、研磨剤を含むシャンプーやコンパウンドで洗ったり研磨をして、磨き方や拭き上げ方を誤ると洗車傷ができるようなものです。そういった場合、車では正しい洗車法や、ボディ表面へのコーティングが有効だと言われています。歯でも同じ事で、当院でもプロの手による専門の材料を使った着色取り、歯牙表面の傷を修復するトリートメントなどを行っておりますので、ご関心いただけましたら是非スタッフまでお声掛け下さい。