インプラント矯正の新しい潮流
今日はインプラント矯正のセミナーに参加しました。
矯正の分野にインプラントが導入され始めたのは10年くらい前でした。歯を動かすのには、針金やゴムで力をかけますが、その反作用で固定源にしている大臼歯も多少動きます。この動きを止める物として小さなビス状のインプラントを使う方法が普及してきたのです。私も時代の流れに乗って、7年前から矯正用のインプラントを使い始めました。実際にやってみると、成功する事もありますが多くの欠点を抱えていました。小さいので外れやすく2~3割は脱落してしまいます。また、根と根の間を狙ってインプラントを入れますが、ピンポイントなのでなかなか難しいのです。もう一つ最大の欠点は、インプラントの位置により動きが複雑になります。
これらの欠点から、次第に使わなくなりました。しかし、いつかシステムとして安定的で安全な方法が出てくるだろうと予測していました。今日のセミナーは、アイ ステーションという商品名で、最大手のロッキーマウンテンモリタという会社から発売されました。九州初講演会ということで、40名くらいの先生方がいらしていました。
治療方法としては下図のような物を上顎に固定します。
これで歯を前後左右上下に自在に動かせ、しかも安全で迅速に動かす事が可能です。
これを使用する事による患者様にとってのメリットを4つほど、ご紹介します。
1.今までできなかった難症例でも、できるようになります。
骨格を変える事は出来ませんが、いままで難しいとされていた歯の沈下(圧化)とか大臼歯の後方移動が可能になります。
2. 抜歯しないとできなかった矯正が、抜歯なしでできる可能性がかなり広がりました。
重症の場合は抜歯しますので、全部ではないのですが、抜歯の可能性は半分以下になりました。抜歯してスペースを作っていた方法から、大臼歯を後方に移動してスペースを作る方法に変える事が可能になったからです。
3. 治療期間がかなり短縮します。
通常は簡単な矯正の場合で2年半くらい、重症の場合は3年半くらいかかります。それが、半年~1年短縮されます。極端な場合1年半で矯正が終了となります。
4. 治療の精度が格段に良くなります。
顔の中心がずれている非対称な症例、上の歯と下の歯の中心がずれていたりする非対称な症例、また左右の高さが違う傾いた症例などでは、インプラントを使用しないと限界がありましたが、完全に治るようになりました。
矯正は歯科治療ですから、治療に流行はないのですが、古い矯正治療は進化の潮流に飲み込まれて、次のステージへと変化し、舞台の主役も変化していくのを感じます。
いわゆる表側のワイヤー矯正 ⇒ 入れ歯型の床矯正 ⇒ 裏側のワイヤー矯正 ⇒ 透明マウスピース矯正 ⇒ システム化されたインプラント矯正 (当医院ではこれら全ての方法を取り扱っております) このように変化しています。
こんな感じで、今日は新しい潮流を肌で感じ取ったセミナーでした。